
作曲家であり、ピアニストでもあるフランツ・リストがヨーロッパの町へ旅に出ました。
ちょうどそのとき、町の劇場で、リストの弟子という女流ピアニストが演奏会を開くということで評判になっていました。
しかし、リストはそのピアニストの名前を聞いたことがありませんでした。
彼がホテルの部屋で休んでいると、若い女の人が訪ねてきました。
その人こそ、リストの弟子ということで演奏会を開こうとしていた人だったのです。
その人は「私のピアノを聴いてくれる人がいないので、リスト先生の弟子ということにしました。
お許しください。今夜の演奏会を取りやめます。」
と涙を流して謝りました。
言い訳を聞いていたリストは「今夜演奏する曲を聴かせてください。」と言って、彼女をピアノのある部屋に連れていき、その曲にじっと耳を傾けました。そして聴き終わると、演奏の仕方について細々と注意を与えてから
「私は今、あなたにピアノを教えました。これであなたは私の弟子です。今夜の演奏会が成功しますように。」と励ましてあげたのです。
人はよく過ちをおかします。リストのように温かく広い心を持ちたいものです。
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