ジェームス・ロスチャイルド男爵が、ある時、友人の家のパーティーに招かれました。食卓につくと、隣に座っていた有名な芸術家がしげしげと何度もジェームスの顔を見るのです。
「どうしたのですか」と尋ねると、「実は私はモデルを探しているのですが、あなたのお顔が私の希望にピッタリ合っているので、つい見とれてしまいました」ということでした。それがこじきのモデルだということを聞いて、みんなはドッと笑ってしまいました。しかし男爵は申し出を快く受け、こじきのモデルを務めました。髪をぼうぼうにしてボロの服を着て、疲れ果てた格好をして何日もかかりました。
ある日、1人のみすぼらしい青年がアトリエにやって来ました。
彼は帰りにポケットから銀貨6枚を出し、「これを夕食の足しにして下さい」と言って、モデルのこじきの手のひらに載せて帰りました。
この青年に興味を持った男爵が芸術家に聞いてみると、「美術学生で、大変有望な人ですが、貧乏で授業料も払えず、困っています」ということでした。
自分も貧しいのに、なお人に分け与える精神を持つこの青年に感動した男爵は、翌日、早速、一通の手紙を送りました。
「昨日は大変貴重なお金をありがとうございました。今日は私がそのお礼をすることにします。このお金でしっかり絵の勉強を続けて下さい」と。
私達も沢山は持っていませんが、分け与える心を忘れないようにしましょう。
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